(双極性障害Ⅱ型体験談)31歳男性 会社員

2015年 4月 7日

プロフィール
31歳(会社員)
22歳の時にうつ病の診断を受ける。
その後、28歳の時にうつ病ではなく双極性障害Ⅱ型であるとの診断を受ける。

診断名が変わったことで治療目標も変わるという転機

私は22歳の時にうつ病と診断され、治療を受けていました。うつ状態を予防して、元気な状態をなるべく維持する事が治療の目的でした。それまでは、いつかうつ状態がやってくるからそれまでは、走れるだけ走って、うつ状態がやってくると休むという事を繰り返していました。そんな僕の状態を見て、会社の人に「うつ病ではなく、双極性障害では?」と言われ、一緒に病院に行きました。診断の結果は双極性障害Ⅱ型でした。

 

これの意味する事はベストコンディションと思っていた状態が「軽躁状態」という症状が出ている状態で、この軽躁状態が上がりすぎないようにコントロールすることに治療の目的が変わるという事です。なぜならば、軽躁状態をコントロールできないと、活動量がどんどん増えて、結局、次に来るうつ状態が深く、長く続いてしまうからです。そして、躁状態とうつ状態の差が大きいことが自殺の原因になったりして危険でもあります。

 

それまで、自分は元気な時に頑張れるだけ頑張って、うつ状態が来ると1か月くらい外に出られない位に落ち込んでいました。でも、初めて軽躁状態が上がりすぎないようにコントロールした時に、次にきたうつ状態が2週間くらいで回復しました。それで軽躁を抑える効果を実感することができました。

 

多くの双極性障害Ⅱ型の人にとって、気分が上がっている状態(軽躁状態)は本人にとっては「ベストの状態」と思えるものです。だから、その後のうつ状態の落ち込みがひどいといっても気分が上がるのを抑えるのには抵抗を感じます。でも、自分の経験から言うと、軽躁状態を良しとして、一気に走って、うつ状態で落ち込んでしばらく立ち直れないという事を続けるより、軽躁状態を上がりすぎないように抑えた方が、トータルでみると仕事のパフォーマンスは良くなっています。そういう意味でも、気分が上がりすぎないようにすることは大切だと思います。

 

「どんな時に自分は軽躁状態になるのか?」自分を知り、コントロールする事で、症状に振り回されなくなりました。「楽しむ」という基準も変わりました。これまでは走り切る、刹那的な楽しみだったのが、走り切らなくても良い状態が長く続くほうが良いと感じるようになりました。また、昔は病気=自分となって自分を責めて苦しかったですが、今はあくまでも病気は病気で自分とは切り離してコントロールすればよいと思っています。

 

症状のなされるがままにならず、症状を自分のコントロール下に置くために「自分のプロになる」という事が大切だと思います。例えば、メジャーリーガーのイチローは毎日一定のペースで生活をして、自分の小さな違いに注意をはらうことでベストコンディションを保っています。それと同じで、自分はどんな時に躁状態、うつ状態になるのかを知って、自分なりの対処方法を考える。この対処方法は人によって違います。書籍やネットに書いてあることに自分を合わせようとするとうまくいきません。私の周りでも症状のコントロールができている人は自分がどういう対処をすれば良いかが突き詰められています。

 

僕は社会復帰してから約3年になりますが、日常生活に支障が出るほど気分が上がりすぎたり下がりすぎたりしないように自分の症状をコントロールできるようになってきたと感じています。そのために私がどんなことをやってきたのかをお話したいと思います。

 

症状コントロール方法その① 自分のトリセツを作る

私は自分がどんな時に躁に転じるのか、その時にどんな兆候が表れるのか、周りからはどのように見えるのかを観察して「自分の取扱説明書」を作りました。

 

例えば、自分は睡眠に明らかな兆候が出ます。気分が上がると朝の4時5時に起きて活動したくなります。そんな時は起きたくてもいつも通り夜12時から朝7時まで布団に入っておくという事を続けます。あと、音楽を聴くときも、バラードを飛ばしてテンポの速い曲ばかり聞きたくなる、横断歩道を走って渡りたくなるなどのサインが出ることも分かっています。だから音楽も曲順を飛ばして聞かないように、横断歩道はきちんと歩くなど、いつも通りもしくはそれ以上にゆっくり動くようにしています。

 

また、うつ状態になる時の兆候も睡眠です。土日に長く眠ると調子が悪くなります。なので、決まった時間にベッドから出るようにしています。過眠はだめだけど昼寝はOKにしています。それから一日一回は外に出る。これが守る最低ラインにしています。

 

症状コントロール方法その② 「休む」という予定を入れる。

気分が上がるとどんどん予定を詰めてしまうので、用件2件のうち1件は断る、週末のうち1日はしっかり休むという決め事もあります。かといって予定が空いているのに断ると相手に悪いように感じてしまいます。そのため、私は「休み」を予定にいれるという事を考えました。そうすれば断るときに罪悪感がないし、自分にもストップをかけられます。飲み会でも睡眠時間に影響しないように一次会で帰る、22時には帰ると事前に幹事に伝えるなどして自分が帰りやすくする工夫をしています。

 

気分が上がってやりたい事をやらないようにするのはつらくないか?と聞かれますが、やりたい事を全部我慢するということではありません。我慢ばかりだとストレスで反動も出てしまいますので、少しずつ発散します。やりたい気持ちを10として、その3~4くらいの内容で止めておくという感じです。それで大丈夫そうなら様子を見ながら5~6と徐々に広げていきます。具体的な自分の事例では1年目は平日夜に予定を入れませんでした。コントロールできるようになってきたなと感じた2年目は平日夜間学で産業カウンセラーの資格を取りに行きました。最初はすごく疲れてしまいましたが、徐々に慣れてきて、最終的には資格を取れ、自信になりました。どこまでなら大丈夫が確認しながらできる幅を徐々に広げていく。常に自分との対話ですね。

 

人間、使えるエネルギーの総量は変わらないとすると、軽躁でエネルギーを使いすぎた分、うつ状態になる事でエネルギーの使用量を抑えてバランスを取ると考えれば、うつ状態を防ぐには軽躁をコントロールすればよいのではないかと思います。

 

症状コントロール方法その③ 薬でのコントロール

あと、薬でも症状をコントロールします。主治医の先生に気分の上がり下がりをこまめに伝え、それに基づいて先生と処方について話し合っています。こうやって症状をうまくコントロールできるようになるまでは大体2年くらいかかりました。ただ、油断は禁物なので、きちんと自分の取り扱い説明書を守り、一定のペースを崩さないようにしています。

 

自分が症状をコントロールするために行ってきたことを書いてきました。これとはまた別に、自分が社会復帰に際して大切だったなと思うのは①コミュニケーション方法の改善と②農作業の2つです。

 

社会復帰のために大切だったことその①コミュニケーション方法の改善

私はいつも自分で抱え込みすぎる癖がありました。人に相談せずにガーッと走って途中でバテても人に相談できず自滅していました。相談をすること自体が自分に負けているようで許せなかったのだと思います。相談すること、相談されることのメリットを知り、コミュニケーション方法を変えることで抱え込みすぎる事がなくなり、楽になりました。

 

社会復帰のために大切だったことその②農作業

それまではパソコンに向き合う仕事をしていましたが、仕事をしていても何かを達成しているという実感がありませんでした。農作業は土をさわると気持ちいい、栽培している作物が大きくなり、実際に収穫して食べると成果が目に見え、生きている実感を得る事が出来ました。パソコン仕事は実感がない分どこまでもやってしまう、どこまでやればいいか分からないので、やりすぎてしまう傾向がありましたが、農作業は天気など自分ではどうしようもないことが発生します。そのため、あきらめるという事を覚えて、自分にストップがかけられることがよかったです。生きている実感を得たことでそれまでは自分なんていつ消えてもいいと思っていたけどそういったことも考えなくなりました。

 

周りの人へのアドバイス

最後に周りの人へ接し方のアドバイスとしては、本人は軽躁状態である事を非難されたと感じるとカチンと来ます。なので、意見を言う時は、事実の伝達だけでそれに対する感情や評価をくっつけないようにしてほしいと思います。例えば自分の場合、SNSに遅い時間に投稿していたことを良くない事として指摘されるとカチンと来ますが、「遅い時間に投稿していたよね。」という事実だけなら、あ、まずい気を付けなければと思います。あとは、この人の話なら冷静に聞けるという第三者がいるとなおよいと思います。

 

そしてうつ状態の時は見守ってください。うつ状態の時は自分の存在を否定しがちです。自分は居てもいいのだと思える、見捨てられていないという環境を作るように接してください。

 

また可能であれば、「自分の取扱説明書」の内容をすり合わせられるとなお良いと思います。見える情報は立場によって違います。たとえば、私の場合は自分が多弁になっていると思っても、相手から見ると上から目線でモノを言っていると感じていたりとかみ合わない場合があります。すり合わせをしておけば言ってもらうことで変化に気付き、ストップをかけることができます。判断の基準を合わせておくことが大切だと思います。また、本人は何の活動が増えているか、何がやりすぎか分かりません。だから双極性障害Ⅱ型は最初は人を巻き込んで対処していかないと難しいのではないかと思います。実際、私も自分の取扱説明書作りやコミュニケーション方法改善、農作業は社会復帰支援施設のサービスを利用しました。

 

そうやって自分に気づかせてくれる接し方をする家族が近くにいない場合は、自分がどんな時に刺激を受けるかを知り、そういうシチュエーションでは気を付けるようにするといいのかなと思います。刺激を受けやすい仕事上の出張などは気を付けた方がよいようです。