(うつ病体験談)32歳男性 会社経営(後編)

2015年 3月 23日

体験者プロフィール
広瀬眞之介
株式会社小石川 代表取締役
事業創造コンサルタント/メンタルトレーナー
http://maccoto.com/
「カウンセリング・クリエイト・コミュニティ」の”3つのC”を使い、事業創造・起業家育成・メンタルヘルス復職支援を行う。
2009年、ソーシャルメディア上でお米を売る「トラ男」アドバイザー。
2011年、“猫のいる”協働オフィス「初代ネコワーキング」を開設。
2013年、うつ病の周囲の人に向けた相談サービス「Qyour」の開発サポートなど、
イノベーティブなコンセプト/サービスづくりの実績多数。
「起業家を育てる研修」が”心を病んだ人や”にも効いたことから以後、起業家育成からメンタルヘルス復職支援まで行う。最新事業は「研修用
うつ病体感カードゲーム “ウツ会議”」。

(前編はこちら)

③ 地域団体のボランティア参加で久々に社会に

ある程度家事が出来るようになった頃修了した大学院の人に声をかけられて地域団体の自主ゼミに参加することになり、久々に社会的な場所にでました。ただ、継続的にかかわるには体調の不安があったのでそのことを自主ゼミの仲間に相談しました。そうしたら、僕が常にいなくてもまわるように、常にバックアップ体制がある状態で業務を進行するようにしてくれました。いわゆる僕に最適化した組織体制にしてくれたのです。その仲間は実は、親を自殺で亡くした子供向けの施設でボランディアしていた経験があり、うつ病がどんなものか知識を持っていて、このように考えてくれました。これは久しぶりに社会とかかわる自分にとってはとてもありがたい配慮でした。

 

④ 「お前が稼がないから!」で本格社会復帰

地域団体のボランティアを経て29歳の時に起業することになりました。きっかけは3.11の東日本大震災です。一緒に住んでいた彼女の実家が福島県で福島第一原発の事故で立ち入り禁止になった地区のすぐそばでした。彼女は毎晩、携帯電話で被災地の情報を確認して全く眠れていない状況が1週間以上続いていました。そんな状態で毎日フラフラになりながらも出社していたので、僕はたまりかねて、「もう仕事を休んで!」とお願いしました。すると「お前(広瀬)が稼がないから私(彼女)が稼がなきゃいけないからでしょ!」とキレられました。普段はこのような事は言わないので彼女もよほどせっぱつまって余裕がなかったのだと思います。

 

それを聞いて僕は「確かに。」と思いました。「こいつがフラフラなのは震災のせいではなく俺のせいだ。」と。一番大切な人を幸せにできていない、むしろ一番大切にしたい人を困らせているのは俺だと自覚し、このままではいけないとより動くようになり始めました。ちょうどその時、「コンクリートから人へ」という政策の中で、社会起業に補助金が出るようになっていました。僕が専門としている地域づくりも対象でした。僕はビジネスプランをつくって補助金を獲得。コワーキングスペース「ネコワーキング」を運営する会社を興しました。

 

⑤ 2度目の再発

そのままうつ病とはおさらばできればよかったのですが、なかなかそうはいきません。当時は軽躁状態だったのだと思います。一日12〜16時間くらい毎日働いていました。しかし、そんなことは長くはつづきません。働きすぎで目が乾きすぎて末期には、2日間PCやスマホ画面が見えなくなりました。ドライアイのすごいひどいバーションでした。事業の業績も芳しくなく、結局は事業譲渡をすることになりました。その時には会社の運営で背負った多重債務が手元に残りました。そしてしばらく休養した後、今の新規事業開発の仕事を始めます。しかし、それもつかのま、その後腸の調子がまた悪くなったり、転んでひざのお皿を粉砕骨折して1ヶ月間入院したり。また盛り上がったなぁと思った頃、新しいプロジェクトが合わなくてまたしてもうつ病を再発したり。仕事のメールの文面も何度読んでもおかしなことを言っているように思いましたが、頭が働かないので、自分の方がおかしいと思い込んでいました。内容が理解できないので彼女に説明してもらおうと読んでもらいました。「このメールの内容、ひどいね。この仕事の振り方はおかしいよ」と言われて、自分がおかしいのではないことにやっと気が付くことができました。

 

このあとまた調子が悪くなっては回復するなど、僕は調子の上がったり下がったりを繰り返していますが、だんだん回復が早くなってきていると感じています。

 

「たまたま必要なタイミングで必要なリハビリができる環境を周りが作ってくれた。」と先に書きましたが、実家がなければ休まらなかったし、彼女の家で家事をするという機会をもらえなかったら何もできないままでした。料理は組み立てて考える練習になってとてもよかったです。また会社で仕事をする前にボランティア団体で活動できたことも本格的な社会復帰のために必要なステップだったと思います。

 

今は自分の経験も事業に生きています。職場でうつ病の人への対応方法を勉強する研修用うつ回復体感カードゲーム「ウツ会議」の開発や、対話トレーニングカードゲームも開発しています。色んな経験をしているのだから、それを生かすようにすればいいだろうと思っています。かなり開き直って楽しくやっています。

 

よく、「うつ病の人の話をどうやって聞いたらいいの?」という質問を受けます。ポイントを3つだけ上げると(1)正直にはなす (2)知った気にならない (3)適切な距離感を持つことです。ですが、これも簡単なようで難しい。初めての方にはある程度のトレーニングが必要です。そのためにも先程の対話トレーニングカードゲーム「ヒーローインタビュー」を開発しています。うつ病の人を支えたいという方にはぜひ試していただきたいですね。

 

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