(うつ病体験談)うつ病になった後、なぜ休職しなかったのか?~休んでても焦りはある。「休む」って難しい!~

2016年 3月 7日

休んでいても焦りはある

Sさん:宮原さんの場合は休職しながら休んでいたというお話でしたが、心から本当に休めましたか?
 

宮原:およそ1年半の期間休んでいましたが、後半の半年くらいは休めている実感はありましたね。
 

初期〜前半の方は、誰かから「働け!」って言われたわけでもないのに、家で休んでいても「他の同僚は同じ業務内容で働いているのに、何故自分だけドロップアウトしたんだ」という自責感や、「早く、早く復帰しないと」という焦燥感が強くて、休めていたかというと微妙な感じです。布団のなかで、そういったことを自問自答しつつ情けなさから昼間から悶々してひとりで泣く、みたいな状態がしょっちゅうでした(笑)。
 

たまに調子が良い時があっても、体調がまともになったんじゃないかと嬉しくなって無理して外出し、その外出先の道端であったり、家に帰った日の夜には調子が悪くなるを繰り返していました。身体が良くならないことへの焦りみたいなものによって、「はよ回復せねば」という感情が初診から1年近く経つまで続いてましたね。とにかく焦ってた。
 

そういう意味では、僕は働いてはいなかったですけど、その初診時〜1年ほどの期間は効率の良い休息にはなってなかったですね。
 

Sさん:何かわかるなー。僕も大学卒業後に病気とかじゃなく、引きこもってニートをしてる時期があったんです。でも、そのとき、全然楽じゃなかったんです。人の目を気にして、自分のなかで何もトライしないことによる焦りがあって、家にいるけど落ち着けなかった。
 

宮原:同じですね。例えるなら、「宿題を全然やっていない夏休み終わり間際」というか。
 

たまたま僕は休職できましたが、当然休める期間は永遠じゃないので、早く普通に話せて動けて外出して、という状態にしないといけないと思ってました。それがある意味、夏休みの例えでいう、やっておかないといけない宿題(課題)です。
 

なのに、何ヶ月経っても結局体調は悪いままで、頑張って外出してもより一層具合が悪くなって、お医者さんに「そりゃ急には無理ですよ」と言われて終わる、みたいなことを、休職して3ヶ月後から半年ほどの間に何回もリピートして。実際の宿題と違って、こなしかたが分からないから、余計焦る。
 

Sさん:宿題抱えたまま迎える8月31日。うーん、確かに。休職期間の後半に「休めてるな」って思える状態に変わったキッカケは何かあったんですか?
 

宮原:治療が進んで、自責感・焦燥感がちょっと減ってきたというのと、「自分は病気なんだ」ということを認めることで多少開き直り感が持てたことでしょうか。初期の頃は、うつ病になったことを悔やんで、恥じていました。そんな惨めな気持ちのため『自分は病気である』ということをどこか認められなかったんだと思います。
 

しかし、通院を続けるうちにクリニックの待合室で自分と同様に老若男女様々な人が診察を受けに来る姿を目の当たりにしたり、インターネットでも多くの人がうつ病で日々苦しんだり奮闘している情報を知るようになりました。そうした積み重ねにより「うつ病になっている自分」への慣れが生まれて、心が落ち着き、「休んでる感」が得られるようになりましたね。

「休む」って難しい

宮原:Sさんとお会いする前にふと思っていたのが、「本当の休息って、なんだ?」っていうことなんです。いまSさんの思う、「理想の休息」ってなんですか?
 

Sさん:そうですね、普段の仕事のことや他の「やらなくては」と思っていることを感じないで普通にお散歩しながら「お日様がぽかぽかしてて気持ちいいなぁ」と楽しんだり、家でゴロンとすることですかね。ただ、普段だと、どうしても「こんなことしててもいいのか」と思ってしまうんです。
 

普段の勤務時間外や休日でも「○○をやっておかねば」と仕事でも仕事以外のことでも思ってしまうので、それを解消しないことに対する焦りが生まれて休めないのです。焦っても意味ないんだけど、どっかで意識してしまう。だからリラックスできない。
 

宮原:よく本などに「リラックスが大事です、運動が大事ですよ」ということで、リストになって載っていますけど、そもそも罪悪感あるからやったところでリラックスにならない。むしろ、無理してやったところで「やっちまった感」がある、という。
 

Sさん:でも、なかには本当にリラックス出来ている人もいるんじゃないかとも思うんですよ。
 

例えば、めっちゃ仕事している著名人の方なのに、マウンテンバイクとかで遊んでたりもするじゃないですか。体力的には疲れるのに。でも、それがリラックスになっていて、日常の疲れがとれているんだと思うんです。それが普通なのかなと、思う。
 

でも僕は、趣味でも「やっちまった感」をどこかで感じますね。このへん(首の後ろ)に、かならず『こんなことしててもいいのか?』と自分に言ってくるヤツが、常にいるんです。ちなみに、宮原さんは昔からのリラックスできる趣味ってありますか?
 

宮原:夜更かししたり、ラジオ聞いたり漫画読んだり、ネットしたりですね。
 

Sさん:精神衛生上、そういう時間が取れるときと、取れない時の違いはありますか?
 

宮原:あー・・・普段の生活の状況が、そのまま趣味の時間の質に影響してますよね。
 

仕事やプライベートがごちゃついてストレスたまってるときは、なんか切り替えうまくいかず、それこそSさんのいう、首の後ろから「こんなことしてていいの?」がチラついちゃう感じになりますね。逆にうまくいってる時ほど、そういう時間も素直に楽しめちゃうというか。
 

Sさん:パブリックなほうがうまくいってればプライベートもうまくいってる、逆もしかり、ということですね。やっぱり人それぞれですね。ずっとここ(首の後ろ)にある人と、ない人。
 

僕はずっとあります。仕事してても、『仕事以外のことで、こういうことしないと・やってかなきゃいけないよね?』っていうのがずっといて、常になにかしらの「ねばならない」がついているんです。没頭したいのに、って思うんですけどね。
 

なので、会社員のときも、有給を取ったとしても落ち着けず、休んでた気にはならなかったです。いまは多少変わって当時よりはその感覚が和らぎましたけど、休んでてもどこかで感じることはあります。
 

宮原:(首の後ろの)コイツが、邪魔ばっかしてくるんですね。これはなんなんだ!?っていう感じですよね。
 

Sさん:結局、「○○をしなければ」「××はしなくていいの?」と勝手に感じてしまう自分の特性があるから、実際はどこにいても一人でいても落ち着かないんだよね。
 

宮原:趣味などのように、通常「癒し」となる行為でリラックスできる人もいれば、元々休むことが不得手という、人それぞれの違いがあるんですね。
 

Sさん:結果的には僕たち2人ともうつ病になったんですけど、確かにそうですね。
 

「同じ病気でも「考え方」の癖・特性はそれぞれ」に続く

 宮原直孝 一般社団法人いっぱんじん連合 代表理事 1984年 長野生まれ。 会社員時代の09年 7月頃〜11年1月頃までうつ病により休職、その後退職。 転職活動がうまくいかない現実逃避から何となく勢いで当法人を設立。 現在はヘラヘラしながら、 ・深夜に都内を集団で歩く「深夜徘徊イベント」 ・ただダラダラとダベるだけの「ダベPartner活動」 ・出来る事であれば何でもする「代表デリバリーサービス 〜心が弱った時に、都合の良い男〜」 などを行う。 抱えている柴犬は、よく出来ていますが木彫りです。

<執筆者プロフィール>
宮原直孝
一般社団法人いっぱんじん連合 代表理事
1984年 長野生まれ。
会社員時代の09年 7月頃〜11年1月頃までうつ病により休職、その後退職。
転職活動がうまくいかない現実逃避から何となく勢いで当法人を設立。
現在はヘラヘラしながら、
・深夜に都内を集団で歩く「深夜徘徊イベント」
・ただダラダラとダベるだけの「ダベPartner活動」
・出来る事であれば何でもする「代表デリバリーサービス 〜心が弱った時に、都合の良い男〜」
などを行う。
抱えている柴犬は、よく出来ていますが木彫りです。