(うつ病体験談)うつ病になった後、なぜ休職しなかったのか?

2016年 3月 7日

ご覧の皆様、こんにちは。Pint story ライターの宮原です。うつ病になると、就学・就労を続けることが難しい場合も起こりえます。そこで、通院先の医療機関から貰った診断書を提出するなどして、休学・休職といった形でゆっくり休む選択肢もあります。
 

しかし、不思議なもので、例え休める選択肢があったとしても、休まない当事者の方もいます。つまり、周りから「休んだら?」と言われても休まない場合があるのです。それは何故なのでしょうか?今回、その点をテーマに僕「宮原」と、当サイトに体験談を掲載してくれたうつ病当事者の「S」さんとの対談形式でお送りしたいと思います。(Sさんの体験談はこちらになります→うつ病体験談:39歳 男性 プログラマー

「うつ病だから」と、一括りにはできない

『休職』をテーマにこのあとから僕とSさん2人のやりとりをご覧頂きますが、全体を通して感じて頂きたいのは、『「うつ病なのだから」ということで画一的には括れない』ということです。
 

「休職をする・しない」は勿論のこと、休職を目の前にして感じたこと、うつ病の症状のひとつでもある焦燥感について、はたまた元々の思考のクセといったことそれぞれに、僕とSさんには実は違いがあったということが会話を通じて分かってきました。
 

身近にいる方がうつ病になったとき、本人がどういったことを考え、何を感じているのか。それをすぐに言葉にはしれくれない・できないかもしれませんが、「うつ病だから○○」と決めつけずそっと耳を傾けて、お互いの理解を深めていってもらえればと思います。
 

以下、今回の目次になります。

  • なぜ休むことを選択しなかったのか?
  • 休んでても焦りはある
  • 休むって難しい
  • 同じ病気でも「考え方」の癖・特性はそれぞれ
  • 当時と今の「働く事」に対する変化

なぜ休むことを選択しなかったのか?

宮原:Sさん、はじめまして。どうぞよろしくお願いします。
 

Sさん:よろしくお願いします。人見知りなので、ちょっとドキドキしてるんですけども。
 

宮原:あ、良かったです。僕も人見知りなので同じくドキドキしています(笑)。今回、『うつ病なのに、休めと言われても休まないのは何でだろう』ということをテーマにお話をしたいと思っていまして。
 

このテーマになったキッカケとして、ある人と、『知人がうつ病になって、医者から「仕事のペースを落としてください」と言われてたのに、その後全く仕事減らさないんだけど、何で休まないの?!』という話をしたことが始まりで。
 

僕自身はおよそ1年半という期間を休職して休んだのですが、体験談を読ませて頂いたことろSさんはうつ病の診断を受けて休職するよう言われたけども、結局休まなかったんですよね?
 

Sさん:そうですね。当時はシステムエンジニアとして顧客企業先に常駐する勤務形態でした。そのときにうつ病の症状が出たので病院に行きました。うつ病という診断結果を聞いた時に「仕事を辞めようと思います」と言ったら、医師から『今は決断しないで休職してください』と言われました。
 

ですが、その後に休職はせず、当時の上司の配慮により週5日勤務から1日減らしてもらった週4日勤務という形で働き続けました。
 

宮原:1日勤務が減ったというのは、どうでしたか?
 

Sさん:「助かる〜」という思いはありました。ただ、実際に休むと落ち着かず、「〜〜をいつまでにやらないとだ!」って思い、結局1日減らした日の午前中に出勤してしまい、上司から「お前、なんでいるんだ?!」と怒られ、「俺ってだめだな〜」と凹んだり。
 

宮原:それは、あんまり休めてなさそうですよね。まずストレートに伺いたかったのが、何で診断後に休職しなかったんですか?
 

Sさん:休もうとしなかったのは・・・何でだろうなぁ。自分のなかで、そういう選択肢がなかったからなのかもしれません。
 

宮原:僕は診断を受けて「診断書を出しますか?会社に提出することで、休むことも可能ですよ?」とお医者さんに言われたんですが、休職という話を聞いた時、まず最初に『え・・・休めるの?会社休めるの?!やった!!』って思ったんです、正直。なので、翌日にはすぐ休職の手続きを踏みました。
 

互いに診察時に医師から『休職』というフレーズが出たのに、それに飛びついた僕と、休まなかったSさんの違いというのは気になりますね。
 

Sさん:うん、確かに。なるほど。
 

宮原:ただ、実際休職した後には、休むことで社会から取り残されていくような焦燥感や、職場の同僚や先輩に一言も言わずに仕事を全て放り出してきてしまった罪悪感とかをすぐ感じるようになってきて、休んでいるのに休めていないような状態が暫く続いたんですが。
 

Sさん:僕が休まなかったのは・・・、仕事に対して、意固地になってたのかな。いや、見捨てられたくないっていう執着、しがみつきかな。ポジティブな感情での「やってやる!!」っていうんじゃなくて、例えば失恋した時の「別れないで、そこをなんとか…!」みたいな(笑)。
 

宮原:あはは、その例え、なんかすごく分かる気がします(笑)。その執着っていう部分に関して、もう少し聞いても良いですか?
 

Sさん:ただでさえ病気になると、人に対して引け目を感じるじゃないですか。引け目から、これ以上仕事ができなくなると、みんなより下にいってしまうっていう。そんな感じかなぁ。
 

宮原:「下にいってしまう」というのは、同僚の方とか、それまで社内で同じように並んでいた自分に対してですか?僕は当時、うつ病になったことで「落ちぶれてしまった自分」という風に強く感じてしまいました。
 

Sさん:今までの自分との比較っていうのはあんまりないかなぁ。小学校の時とか、自分だけ学校を休んでて、クラスの他のみんなが楽しく遊んでると、なんか寂しかったじゃないですか。そういうことなのかも。
 

Sさん:小学校の時とか、本当そうでしたね(笑)。ただ、学校のときもそうですけど、休むことで誰も迷惑はかかってないですよね。会社では、状況や場合によりますけど。
 

Sさん:そう、むしろ休んでくれた方が身近な人にとっては気が楽になったりもしますよね。
 

宮原:社内にいながら何かしらの配慮してもらったり、「(声かけてもらいたいなー)」みたいなのを、実は心の中で密かに願う感じでしょうか?
 

Sさん:そう対応してもらうことで、救われる感覚がありましたね。
 

宮原:「焦り」というキーワードでいうと、2人とも焦っていましたが僕は自分を主軸に感じていて、Sさんはご自身と社会(会社や関係者)との関係に対して執着するという点で感じていたという違いがありましたね。
 

Sさん:そうですね、少しニュアンスが違いますよね。
 

「休んでても焦りはある」に続く
 

 宮原直孝 一般社団法人いっぱんじん連合 代表理事 1984年 長野生まれ。 会社員時代の09年 7月頃〜11年1月頃までうつ病により休職、その後退職。 転職活動がうまくいかない現実逃避から何となく勢いで当法人を設立。 現在はヘラヘラしながら、 ・深夜に都内を集団で歩く「深夜徘徊イベント」 ・ただダラダラとダベるだけの「ダベPartner活動」 ・出来る事であれば何でもする「代表デリバリーサービス 〜心が弱った時に、都合の良い男〜」 などを行う。 抱えている柴犬は、よく出来ていますが木彫りです。

<執筆者プロフィール>
宮原直孝
一般社団法人いっぱんじん連合 代表理事
1984年 長野生まれ。
会社員時代の09年 7月頃〜11年1月頃までうつ病により休職、その後退職。
転職活動がうまくいかない現実逃避から何となく勢いで当法人を設立。
現在はヘラヘラしながら、
・深夜に都内を集団で歩く「深夜徘徊イベント」
・ただダラダラとダベるだけの「ダベPartner活動」
・出来る事であれば何でもする「代表デリバリーサービス 〜心が弱った時に、都合の良い男〜」
などを行う。
抱えている柴犬は、よく出来ていますが木彫りです。