第十二回精神保健福祉士に聞いてみた「休職、退職、自立支援医療と傷病手当金。うつ病に関わる手続きを代理申請できるのか」

2017年 12月 5日

こんにちは、元うつ病のpint storyライター 宮原です。

 

うつ病になると、症状のため思うように動けず、外出もままならない時間が多くなるかと思います。
以前には別の記事で、「診断書をもらいたいのに病院に行けないとき、どうすればいいのか?」をテーマに、精神保健福祉センターに解決案を聞いてみました。

 

今回は、「休職・退職」と「治療のあいだ支えるお金の制度(傷病手当金・自立支援医療)」の、うつ病になると申請する可能性が高いそれぞれについて、うつ病当事者の方が不調のために身動きがとれない際、代理の方による対応が可能か、専門家(精神保健福祉士・社会保険労務士)の方に確認してみました。
ただでさえ大変な苦痛のなか、うつ病当人が細々とした諸連絡・事務手続きを進めるのは非常に困難なことです。参考となる方もいらっしゃるかと思いますので、ぜひご確認ください。

 

休職と退職の代理手続きは、社内規定による

企業に勤めている方の場合、うつ病の治療に専念するなかで、休職や退職という選択肢に進む方も珍しくないことかと思います。
しかし、うつ病の症状としてあらわれる「自責感」「自己肯定感の低下」などによって、職場の同僚への申し訳なさ・自身の情けなさを感じ、なかなか決断ができない場合や企業側に申し出ることに躊躇し、時間が過ぎてしまう方もいるのではないでしょうか。

 

まずは、休職・退職の手続きについて代理による対応が可能かどうか。専門家の方に伺ったところ、
『雇用者、被雇用者間での取り決め、規定に従う形になる』
とのことです。企業によって社内規定は異なりますので、休職または退職を考え、代理の方に対応してもらう際には、まず確認する必要がありそうです。

 

僕は会社員時代にうつ病による休職・退職の経験がありますが、どちらも自身で社内の人と話しました。
休職については、当時の部長に診断書を見せたところ「よし、まずは休め」と勧められたので休職することになり、退職については後述する「傷病手当金」の手続きを担当していた人事労務部門の方に電話で伝えました。

 

休職の話をした部長は、部下の面倒見が大変よく、もともと信頼できる方だと思っていましたが、それでも診断書を見せる際には、心臓がバクバクし気づいたら涙がとまらなくなっていました。
また、退職の話をした人事労務部の方も、とても丁寧・親切・優しいと評判の方だったので、情けないと思いながらもなんとか退職の話を進めることができました。

 

このように、僕は休職と退職を申し出る相手にたまたま恵まれていました。しかし、社内の人間関係や対応は、このようにシンプルなものとはかぎりません。可能なかぎり自身の負担を減らすことを考え、規定に沿うならば人に頼るという選択肢を考えてみてもよいのではないでしょうか。

 

治療のあいだ支えるお金の制度は、代理申請が可能

休職・退職した際など含めた治療期間中、収入が無くなる・治療費がかさむなど、不安を感じやすいのはお金の問題です。この問題について支援する公的制度に「傷病手当金」と「自立支援医療」といったものがあります。
「傷病手当金」は生活費として使えるお金が給付され、「自立支援医療」は通院などで発生する治療費が安くなる制度です。どちらも利用できれば、収入は確保され出費をおさえることができ、生活の不安を減らすことになります。

 

それぞれ簡単に説明すると、傷病手当金とは、健康保険の加入を条件に、それまでの給与の3分の2ほどの金額が保健組合などから一定期間給付される制度です。おおまかにいうと、月収24万円の方が手続きをふむことで休職中も月あたりおよそ16万円が振り込まれるイメージです。
自立支援医療は、通常3割負担の医療費が、役所に手続きすることで「自立支援医療受給者証」を発行され精神医療費のみ1割負担になる制度です。こちらもおおまかにいうと、通院時に3,000円支払っていた治療費が、まったく同様の処置でも1,000円の請求になると考えてもらえばわかりやすいでしょうか。

 

さて、これら2種類の公的な制度ですが、先に結論をいうと代理申請が可能です。同じく専門家による解説をご覧ください。

 

【傷病手当金】

「本人の意思が確認できていること」が重要で、代理の手続きが可能です。委任状などの新たな書類も必要ありません。申請時に、診断書などが目に触れる可能性がありますが、問題無ければうつ病当人の承諾により、ご家族をはじめ代理人になることができます。

ただし念のため、事前に雇用側に確認した方が無難ではあります。

 

【自立支援医療】

こちらも、代理の手続きが可能です。ちなみに神奈川県内の私の職場近隣の市に確認したところ、次の回答となりました。

A市・・・本人の意思があれば代理申請は可能
B市・・・代理人は対象本人のマイナンバーを確認できる書類と代理人の身分を証明するもの(運転免許証など)、委任状を持参すれば申請は可能
C市・・・本人の意思があることは大前提とし、代理人は身分を証明するもの(運転免許証など)を持参すれば申請は可能

結果ばらつきがありましたが、他市町村も調べてみるとB市の対応が多いようです。また、市町村によっては郵送で申請することもできます。

このように、基本的に代理の手続き自体に問題はありませんが、市町村によって条件が若干違うので申請窓口に確認した方が良いと思います。

 

以上が、専門家からの回答になります。いかかでしたか?僕はこれを知って「やってもらえるなら、当時誰かに頼めばよかった・・・」と、強く感じました。

 

僕は傷病手当金と自立支援医療のどちらも申請し、制度を利用していましたが、どちらも苦労したことを覚えています。
傷病手当金の申請は、休職中の生活費に直結するため欠かせない手続きですが、そうはいっても動けないのがうつ病です。

 

申請内容自体は決して複雑なものではなく、当人が記入する箇所は名前や住所、傷病名や休職の期間や症状を用紙に埋めるのみで、あとは必要書類をまとめて所属企業に郵送すれば対応してくれます。実際書く文字数は、せいぜい100文字ほど。
しかし、その書類1枚2枚を記入し封筒にまとめ郵送するためには、体調がよいタイミングを見定めて、30分ほど準備の時間がかかった記憶があります。
その申請を1~2ヶ月に1度のペースで行っていましたが、とにかくもう、「ひと仕事」感が強く、書き終えたあとはグッタリしていました。

 

自立支援医療については、休職からしばらくしたころ、同じようにうつ病となり制度を利用したことのある知人から「治療費が安くなって得だから、かならず申請したほうがいいよ!」と何度もいわれました。
しかし、とにかく億劫な気持ちが強く、「(わかったよ。でも、そんなことはどうでもいいから休ませてくれ)」という気持ちがつよく、スルーして申請せずにいました。
結局、申請したのは休職してから半年以上経ち、「これはなかなか治るまで時間がかかりそうだぞ」と思うようになってのことでした。

 

申請の手続き自体は非常に簡単で、主に医師からの診断書と証明書や健康保険証のコピーなどを役所に持参し窓口でいわれるがまま動き10分20分もすれば申請の控えを受け取り、申請手続きは終了です。

 

「自立支援医療受給者証」は即日ではなく一定期間経過してから発行され郵送により手元に届きますが、それ以降は通院先に受給者証を提出するだけで格段に医療費が安くなるという流れです。また、申請から発行までのあいだも、申請時に窓口で受け取る申請控えを医療機関に提示することで1割負担が開始される場合がありますので、控えを無くさずに受給者証発行前から1割負担が可能か通院先の医療機関に問い合わせましょう。

 

さて、自立支援医療の申請によって具体的にどれだけ治療費が安くなったか?僕のケースを紹介します。
基本的に通院時に発生していた出費は、月平均6,000円前後でした(月に2回ほどのペースで通院し、その都度3,000円前後を支払っていました)。それが自立支援医療により3割負担が1割になることで、1回の治療費3,000円が1,000円になり、月平均の治療費が2,000円ほどになります。
自立支援医療を申請してから1年ほど通院が続きましたので、本来支払うべき治療費72,000円が24,000円になり、48,000円お得になったことになります。期間がより長期化する場合や1回ごとの治療費がより高い方は、さらに大きな違いになります。

 

傷病手当金と自立支援医療、どちらも決して申請手続き自体は複雑・難解なものではありません。しかし、症状や体調によって、大きな負担となってしまう可能性があると知っていただければと思います。

 

「代理申請」という選択肢

いかがでしたでしょうか。今回は、うつ病当人にとって関わる可能性が高い、「休職・退職」、そして「傷病手当金・自立支援医療」の代理申請が可能かどうかをお伝えしました。

 

これらは、見ようによっては「せめてそれくらいは自分でやろうよ・・・」と思う方もいるかもしれません。会社の休職・退職問題を人に任せるだとか、お金に関わる手続きを可能とはいえ代理で行うことなのか、判断に困ることに感じるかもしれません。
しかし、それまでの当たり前が当たり前ではなくなり、やりたくてもできなくなるのが、うつ病の症状です。「これくらいは自分でやらないと・・・」と思ったとしても、身体と頭がついてこないものです。
僕は傷病手当金のおかげで当面の生活費に困ることはありませんでしたが、一向に体調がよくならない焦りと不安から「このまま傷病手当金の給付期間が終わったら、生活保護に頼るしかない」と頭がいっぱいになった時期がありました。同時に、自立支援医療を申請せず医療費3割負担のまま通院のたびに治療費を支払うという矛盾した行動をとっていました。

 

うつ病の症状は、あらゆる行動を縛るだけでなく、思考も縛りあげます。そのため、わずかな手続き・タスクを処理する能力がガタガタっと落ちてしまいます。
例えば、頭を強く打ち意識が朦朧としている方に「しばらく休ませてください」と会社へ電話させるでしょうか。その電話のあと病院へ移動し、本人が入院の手続きをとるものでしょうか。いえ、きっと家族や身近な方などが手伝いますよね。

 

まずは、いまご家族や身近な方がうつ病で困っているとしたら、今回の記事について当人に伝えてあげてください。

 

冒頭の繰り返しになりますが、うつ病の症状である自責感や自己肯定感の低下などにより、普段以上に申し訳なさや情けなさをつよく感じる場合があります。そのため、代理での手続きについて願望として思ったとしても、当人が申し出ることが難しいかもしれません。
いざとなったらあなたが代わりに手伝うことができると理解し、一歩踏み込んで聞いてみるといいかもしれません。もしかすると、あなたの手助けを待っているかもしれませんから。

 

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 宮原直孝 一般社団法人いっぱんじん連合 代表理事 1984年 長野生まれ。 会社員時代の09年 7月頃〜11年1月頃までうつ病により休職、その後退職。 転職活動がうまくいかない現実逃避から何となく勢いで当法人を設立。 現在はヘラヘラしながら、 ・深夜に都内を集団で歩く「深夜徘徊イベント」 ・ただダラダラとダベるだけの「ダベPartner活動」 ・出来る事であれば何でもする「代表デリバリーサービス 〜心が弱った時に、都合の良い男〜」 などを行う。 抱えている柴犬は、よく出来ていますが木彫りです。

<執筆者プロフィール>
宮原直孝
一般社団法人いっぱんじん連合 代表理事
1984年 長野生まれ。
会社員時代の09年 7月頃〜11年1月頃までうつ病により休職、その後退職。
転職活動がうまくいかない現実逃避から何となく勢いで当法人を設立。
ストレス解消を目的の一環に、
・深夜帯に東京都内を集団でのんびりダラダラと歩く「深夜徘徊イベント」
・東京で深夜徘徊したい方同士を紹介、仲介する無料マッチングサービス「深夜徘徊.match」
などの運営を行う。
抱えている柴犬は、よく出来ていますが木彫りです。

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