第十一回精神科医の先生に聞いてみた。専門家が実践している「信用できるうつ病関連情報の見分け方・確認方法」は何か?

2017年 9月 24日

うつ病の情報は身近にあるけど、膨大

こんにちは、pint storyうつ病ライターの宮原です。

突然ですがクイズです。次の数字は、うつ病に関する数字ですが、何だと思いますか?ちょっと予想してみてください。

 

(1)約1,680万件

(2)2,705件

 

では正解発表です。まず一つ目の数字ですが、これは検索サイト グーグルで「うつ病」と先ほど検索した結果の表示件数。

そして二つ目は、通販サイト Amazonの本カテゴリで同じく「うつ病」と検索してヒットした件数です。便利なことに、いまはこれだけの情報をわずか数クリックで手に取ることができます。

 

僕がうつ病治療をしていた際には身近に病気について相談できる相手がいなかったので、次々と湧き上がる不安な気持ちをどうにかしたくて、とりあえずネットで「うつ病」と検索していました。その検索結果から適当に目についた記事を選び、うつ病に関する理解できる情報だけ闇雲に読み込んでいました。そのなかで自分に当てはまることはそのまま鵜呑みにし、まだ経験のない症状など未体験の情報であれば「いつか自分の身にも起こる」と受け止めて気持ちが落ち込んだりと、情報に振り回されていたと言えます。

 

きっと皆さんも、「気になるタイトルだから、つい」「検索したら上位に表示されたから」というだけでチェックしたネット記事や書籍で知った情報に、一喜一憂した経験があるのではないでしょうか。

しかし僕たちがうつ病の情報を探す際の本当の目的は、うつ病の辛さから解放されるための解決策を1つでもいいから見つけることです。いま自分を苦しめている悩みや病気への疑問といった問題点を解消することのはずです。

闇雲に情報に目を通していた当時の経験から、『正しいうつ病の情報は何なのか、どうチェックすればいいの?』ということでした。

そこで、pint storyでいつも疑問に答えてくれる精神科医の先生にズバリ聞いてみました。

 

『先生!専門家は、どうやってうつ病について信頼できる情報を集めて、正しいかどうか判断しているんですか?』

 

うつ病の情報収集するときに気をつけるポイントや判断する方法をご説明していきますのでどうぞご覧ください!

精神科医も行っている情報の確認方法はこの3つ!

先に要点をお伝えすると、次の3段階のチェック方法を教えてもらいました。

 

1:著者情報とその専門性の有無
2:引用論文の明記の有無
3:引用論文のエビデンスレベル

 

これが信頼できるうつ病情報を確認する順番であり、同時にチェックの難易度の度合い順でもあります。では追って解説していきます!

第一段階:著者情報とその専門性の有無

最初に確認するべきチェックポイントにこちら。

 

『その文章は、誰が紹介しているかが明らかにされていますか?その人はうつ病に関する専門家ですか?』

 

まずは、あなたが読んだうつ病に関する記事の執筆者のプロフィール情報を確認しましょう。例えば、webサイトであれば記事冒頭やページ末尾に、書籍であれば裏表紙の「そで」と呼ばれる箇所に書かれている場合が多いです。

氏名、経歴、顔写真などの情報が表記されているか確認しましょう。なかでも重要なポイントは、著者プロフィールの肩書きに専門家といえる情報が明記しているかどうかです。

この場合の専門家は、具体的には次に挙げる国家資格または公的資格などの有資格者が該当します。

 

→精神科医・精神保健福祉士・看護師・作業療法士・ケアマネージャー(介護支援専門員)

 

お堅い文章や真面目なサイトデザインや凝った装丁といった「なんとなくな雰囲気」のみで、情報の信頼性を判断しがちな方もいらっしゃるのではないでしょうか?気をつけてくださいね!

第二段階:引用した論文が明記されているか

「名前も顔も表記されているよ。経歴だって立派だ。これは信頼できそう!」と、第一段階を確認したら、続いて第二段階のチェックポイントはこちら。

 

『引用した論文を明記していますか?』

 

医療分野に限らず、書籍巻末部分の「あとがき」の後には、書籍内の学術的な記載に対して『参考文献・引用論文』を一覧にしたページがあります。それによって、

『○ページで解説している情報は何某という論文で研究発表されたものですよ』

という根拠を提示しています。細かい記載ですが、非常に大事な表記になります。

というわけで、著者情報に続いて引用論文・参考文献の記載もチェックしましょう!

(ただしwebサイトの場合などは、医学的根拠となりえる引用論文を全て逐一記載するというのは文章を読みづらくするという観点もあります。なので、あえて表記を省略している場合も考えられるので、無下に「おや、記載がないぞ・・・?あやしい!」と決めつけていいかというのはちょっと難しい問題ではあります)

「一次情報」を確認する重要性

さて、ここまでを踏まえて、
第一段階「著者名前も顔も表記されているよ。経歴だって立派だ。」

第二段階「さらに参考文献・引用論文の表記もあるから、医学的根拠もある!」
と確認したあなた。とても素晴らしいです・・・!しかし、これだけで「この情報は完璧だー!!!」と判断するのは待ってください。まだ最後のチェックポイントが残っています。

 

さて、最後の三段階目のチェックポイントの話の前に、ちょっとした小話をしたいと思います。今回疑問に答えてくれた精神科医の先生が、とあるネットの医療記事を読んだときのことです。

その医療記事の著者はきちんと顔と名前が表記された精神科医の方で、記事の根拠となる一次情報(引用論文)と共に「〜〜といった報告もあるので、効果があるでしょう」と解説していました。

しかし、先生がその引用論文について調べたところ、『専門家の目線では「効果がある」というには信用するに足りない、「極めてエビデンスレベルの低い研究発表」』だったそうです。つまり、二段階目までチェックしても、実は信用できない情報だったとのこと。

 

うーん、「極めてエビデンスレベルの低い」研究発表・・・??

 

聞きなれないカタカナ用語も出てきましたが、実は第三段階のチェック方法は、まさにこの「エビデンスレベル」がポイントになります。

第三段階:エビデンスレベルが高い情報かどうか

まず「エビデンス」という言葉の意味から追っていきましょう。

エビデンスとは、「証拠・根拠」という意味になります。例えば、「エビデンスを示せ」と言われたら、『証拠・根拠を示せ』ということになります。

なので、先ほどの「エビデンスレベルの低い研究発表」は『証拠・根拠の水準が低い研究の発表』という意味のフレーズになります。医学的な研究には、エビデンスレベルによって信憑性に順位がつくのだそうです。

そこで、いよいよ第三段階のチェックポイントはこうなります。

 

『引用された研究論文のエビデンスレベルは高いですか?』

 

というわけで、最後はこのエビデンスレベルについて理解していきましょう!

解説!「論文のエビデンスレベル」

最後の第三段階は、引用元の研究論文のエビデンスレベルから判断していきます。

 

治療に関する論文のエビデンスレベルの分類(質の高いもの順)
I.システマティック・レビュー/randomized controlled trial(RCT)のメタアナリシス
→同じ目的で実施された数多くのランダム化比較研究から良いものを選び、それらの結果を適切な手法でまとめたもの。

 

II. 1つ以上のランダム化比較試験による
→研究のために集めた対象者をランダムに複数のグループに振り分け、各グループに治療の実施など何らかの介入(原因の付与)を行って、結果を比較する研究。

 

III. 非ランダム化比較試験による
→Ⅱの研究と、グループの分け方のみが異なる研究。ランダムではなくグループ分けを行う。IIの研究に比べてグループ分けにバイアスがかかる可能性が高い。

 

IVa. 分析疫学的研究(コホート研究)
→症状が出る要因を過去に経験しているグループと経験していないグループに分ける。その後、未来に向かって追跡調査し、症状の発生の有無を比較検討することで、要因の症状の有無の関連性を調べる。

 

IVb.分析疫学的研究(症例対照研究、横断研究)
症例対照研究→症状が出ている人のグループと、症状が出ていない人のグループを作る。それぞれ、研究前に症状が出る要因(ストレスなど)にどれくらいさらされていたのかを過去にさかのぼって調査し、比較することで、要因と症状の有無の関連性を調べる。
横断研究→研究対象集団を一時点で調査する研究。

 

V. 記述研究(症例報告やケースシリーズ)
→ 原因と結果を集団ではなく「一人の症例」で考える。

 

VI. 患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見

実際に研究論文を確認する方法

うつ病の情報の信頼性を判断する方法の第三段階は、引用論文のエビデンスレベルを確認することですが、精神科医をはじめとする専門家・研究者の方は実際どうやって論文を確認しているのでしょうか?僕たち一般的な素人でも可能な2種類の方法を紹介します。

 

一つ目は、PubMed(パブメド)という医学論文の無料検索サービスになります。専門家が論文作成する場合には欠かせない世界的な論文データベースサイトなのだとか。PubMedで目的の資料を見つけたのち、図書館を利用して実際の論文を取り寄せるのだそうです。

ただし、PubMedを利用するということは、外国語の論文を含めたあらゆる論文のなかから必要な情報を見つけなくてはいけません。また、実際に論文を取り寄せるには、ほとんどの場合が有料になります。

 

二つ目は、コクランレビューというサイトです。さきほどのエビデンスレベルの解説で、きわめて高いレベルとして紹介した「システマティック・レビュー」に分類される論文のみが集められているので、掲載されている論文はそのまま医学的信憑性が高いといえるものになります。

ただし、システマティック・レビューに限定された論文だけなので、あなたが求めている文献がそもそも掲載が無いという場合があります。

信頼できる情報かどうか素人が判断するのはとても大変だという現実

うつ病に関する情報の信頼性をチェックする手段を3つの段階に分けてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?

再度、今回お話したチェックポイントの要約を改めて挙げておきますね。

 

1:著者情報とその専門性の有無
2:引用論文の明記の有無
3:引用論文のエビデンスレベル

 

いかがでしょうか。さぁ、今すぐ参考にしてみてください!
・・・・いやいや。正直、三段階目が専門的過ぎて難しいですよね。というか論文を探して読むとか無理です。

 

冒頭でも触れましたが、今回の記事テーマを取り上げた理由は、僕自身が闇雲にうつ病の情報をネットで調べていた経験が元になっています。今思うと闇雲に調べていた原因は、うつ病の症状による不安感・焦燥感による影響と、そもそも情報を判断する基準を全く知らなかったからです。

しかし、医学的に有益な情報かを判断するのは、結局のところ多くの人にとって難しいということが分かりました。そこで、次の提案を最後にこの記事を終わりにさせて頂きます。

 

ネットや書籍で知った情報をそのまま鵜呑みにはせず、まずはあなたのいちばん身近にいる専門家、例えば主治医に随時質問や相談をしてください。治療方針はもちろん、うつ病にかかわることであれば何でもです。

質問や相談をする目的は、素人である僕たちでは判断できない情報に対する疑念をすっきりと晴らして、治療と休養に専念するためです。

 

もしも、主治医に尋ねても「説明が足りない」もしくは「納得できない、信頼できない」ということであれば、別の精神科医(セカンドオピニオン)との診察を検討しても良いでしょう。

お近くの病院・クリニックを探す際は、精神保健福祉センターによる無料相談も活用できます(記事リンク)。

 

今後うつ病に関する情報を調べる際には、「とりあえず闇雲に探す」のではなく、ご紹介したチェックポイントを参考にしながら、専門家に相談するという選択肢を忘れないようにしましょう。

 宮原直孝 一般社団法人いっぱんじん連合 代表理事 1984年 長野生まれ。 会社員時代の09年 7月頃〜11年1月頃までうつ病により休職、その後退職。 転職活動がうまくいかない現実逃避から何となく勢いで当法人を設立。 現在はヘラヘラしながら、 ・深夜に都内を集団で歩く「深夜徘徊イベント」 ・ただダラダラとダベるだけの「ダベPartner活動」 ・出来る事であれば何でもする「代表デリバリーサービス 〜心が弱った時に、都合の良い男〜」 などを行う。 抱えている柴犬は、よく出来ていますが木彫りです。

<執筆者プロフィール>
宮原直孝
一般社団法人いっぱんじん連合 代表理事
1984年 長野生まれ。
会社員時代の09年 7月頃〜11年1月頃までうつ病により休職、その後退職。
転職活動がうまくいかない現実逃避から何となく勢いで当法人を設立。
ストレス解消を目的の一環に、
・深夜帯に東京都内を集団でのんびりダラダラと歩く「深夜徘徊イベント」
・東京で深夜徘徊したい方同士を紹介、仲介する無料マッチングサービス「深夜徘徊.match」
などの運営を行う。
抱えている柴犬は、よく出来ていますが木彫りです。

Categories: 用語集

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