こんにちは、pint storyうつ病ライターの宮原です。
うつ病を発症すると、まるで別人になったように様々な変化が次々と起こってしまうことに驚き、大きな不安を感じている方が多いのではないでしょうか。
以前までと言動や行動、外見はたまた表情ひとつとっても違ってしまっていることで、
「ずっとこのままなんじゃないか。もう2度と以前のように戻らないんじゃないか。」
といった気持ちが募り、本人はもちろん、周囲の方も心配が止まらない時期があります。
そこで今回は、そういった余計な心配で治療への気が削がれることのなく安心して治療に専念してもらえるよう、うつ病による変化から元に戻るのか精神科医の先生に伺ってみました。
今回はこういった項目でお話しさせて頂きますね。
・うつ病の変化の「3つの原因」
・うつ病によって起こる変化一覧リスト
・現在の「うつ病の症状」の認識
・薬による変化の可能性
・全ては、うつ病から元に戻るため
うつ病の変化の「3つの原因」
先に結論を述べますが、先生によると今回挙げた変化(後ほど具体的に挙げていきます)の原因は、次の3つに分かれるとのことです。
(1) うつ病の症状
(2) 薬との関連が疑われる変化
(3) 病気や薬に関連する可能性のある変化
そして、この3つによる変化は、すべて『うつ病が治り、そして薬を飲まなくなれば元に戻ります』とのこと。
以上をよく覚えて頂きつつ、先生に確認してもらいました具体的な変化例をみてみましょう。
うつ病によって起こる変化一覧リスト
まず、今回挙げてみた変化は以下の通りです。一部は僕自身にも実際起こった状態です。
・食欲低下による体重減少
→それまであまり体重に増減のなかった方がジワジワ痩せていくことがあります
・体重の増加
→逆に、体重が増え始めて、顔や身体にあきらかに脂肪がついてくることも。僕は食事の量が増えたわけではなかったのですが、気づいたら7〜8キロ太っていました
・頭の回転が遅くなる、物忘れがひどいなど思考力の低下
→例えば、もともと料理が得意であった方でも「まず何をして次はどうするか」といった手順がわからなくなって台所で呆然としたり、スーパーで買い物をするのにも何を買いにきたのか思い出せない・何から買えばいいのか頭が働かなくなる、といった状態を指します。僕は、うつ病以前から利用していたスーパーで、どうすればいいのかよく分からなくなり立ち往生したりウロウロすることが増えました
・趣味への興味、関心の低下
→以前まで何よりも幸せな時間だった自宅での映画鑑賞を全くする気にならない、好きな漫画の新刊が手元にあるのに読む気がしないなど
・虚ろな目や暗い表情
→何かあったわけでもないのに表情が乏しかったり、目つきや目の色が変わるといった変化です
・以前よりも甘いものを食べたくなるという、食の好みの変化
→特に食べる習慣がなかったアイスだったりチョコなどのお菓子類など、デザートを欲しがるようになった
・お喋りが下手になる(口がまわらない、単語が出てこない、発声・声量のコントロールがうまくいかないなど)
→会話のキャッチボールがスムーズにできなくなったり、ボソボソと喋るようになるなど
・ニキビ・肌荒れ
→まるで思春期の頃のようにニキビが出てきたり、そのほか吹き出物など肌質に変化が起こる
・体力・筋力の低下
→すぐに疲れるなど、明らかに基礎体力が落ちているようになることを指しています
以上の各変化について、先述した「3つの原因」に先生がそれぞれ振り分けるとこうなりました。
(1)うつ病の症状
・食欲低下による体重減少
・頭の回転が遅くなる、物忘れといった思考力の低下
・趣味への興味・関心の低下
・虚ろな目や暗い表情
(2)薬との関連が疑われる変化
・以前よりも甘いものを食べたくなるという、食の好みの変化
・体重の増加
・思考力や物忘れなどの頭の回転の低下
・お喋りが下手になる(口がまわらない、単語が出てこない、発声・声量のコントロールがうまくいかないなど)
・虚ろな目
(3)病気や薬に関連する可能性のある変化
・ニキビ・肌荒れ
・体力・筋力の低下(こちらについては、「病気や薬の直接的な影響ではなく、うつ病による活動性の低下による二次的なものと考えられます」とのこと)
いかがでしょうか。うつ病になられたご自身、また身近な方にとっても、見覚えのある変化が含まれていたかもしれません。
しかし、冒頭の繰り返しになりますが、これらはすべて、『うつ病が治り、薬物治療をしなくなれば戻ること』です。
あくまでも、病気途中による一時的な変化なんだということを知ってもらえればと思います。
現在の「うつ病の症状」の認識
うつ病になると様々な症状が出る、というのはここまで述べたとおりですし、既に十分ご存知の方もいらっしゃることでしょう。
なかには、「なんでうつ病になると、こんなに色々な症状が起こるんだ?」と憤りに近い疑問をお持ちになる場合もあることでしょう。
先生からの添えられたお言葉でもあるのですが、実は、現在ではまだ、『うつ病が起こる原因がわかっていないため、なぜ各症状が出るのか証明ができない』とのことです。
そう、そもそも『うつ病発症のメカニズムは完全には解明されていない』のです。
これまで、うつ病などメンタルヘルス関連のwebサイトや書籍で調べられた方ならお気づきかもしれませんが、必ず、
「うつ病はセロトニンが不足することによって起こると考えられています」
といった表現になっています。
現在、うつ病が起こる仕組みとして最も有力なのは「モノアミン仮説」と呼ばれているもので、気分を調整する脳内化学物質(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン。これらの総称が「モノアミン」)が不足することで脳に変化が生じてしまい、うつ病になると考えられています。
ただ、「そもそも、なぜモノアミンが減ってしまうのか?」といった根本の箇所や、「なぜ薬物治療で不足している分を補っても、効果が現れるのに数週間かかってしまうのか?」といったことが不明のため、うつ病発症の仕組みを完全に特定したとはいえず、あくまでも「仮説」ということになっています。
薬による変化の可能性
また、先生は「(1)うつ病の症状」と同様に、「(2)薬との関連が疑われる変化」についても『薬の作用でこうなるのだろう、という仮説の域は出ない』という点をおっしゃっていました。
「(2)薬との関連が疑われる変化」について補足しますと、薬物治療で処方される各種の薬には、効果にともないそれぞれ副作用があるため、変化を起こす可能性があります。
例えば、『体重の増加』という変化についての仕組みとして、抗うつ薬の一部に「ヒスタミンH1受容体」というものを遮断する効果がありますが、主な副作用に肥満による体重増加があります。また、『思考力の低下・お喋りが下手に』についても、同じく「ヒスタミンH1受容体」を遮断することで鎮静作用による眠気、倦怠感が副作用として起こり得ますし、抗不安薬には鎮静作用と筋弛緩作用が有るため、眠気、ふらつき、脱力感が表れることがあります。
薬物治療をすすめるうえで主治医の判断により、抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬など複数の種類の薬が処方されますが、もともとの効果の延長上や副作用により様々な変化が起こる可能性があります。
しかし、これも「うつ病の症状」と同様、人によって表れるかどうか、はたまた度合いも異なりますので、治療や普段の生活に支障をきたすようであれば診察時に報告・相談をしましょう。
全ては、うつ病から元に戻るため
今回の記事で感じて頂きたかったのは、「安心して治療に向き合ってください」という点です。
うつ病当事者の方は、それまでとの変化に気づくと、どうしても「なんでなんだろう」「どうしてこんなことが起こってしまうんだろう」といったことを、自責の念と悲観した捉え方のセットで思い悩んでしまいます。
それ自体はうつ病の症状なので「思ってしまう」ことはなかなか止められないかもしれません。ただ、あくまでもうつ病の最中限定のことであって最終的に治療が進めばいずれは元に戻るんだ、という結論だけは知って欲しかったのです。
うつ病は、突然ある日ピタッと全ての症状がなくなるというものではありません。そして、徐々に良くするためには、薬物療法やゆっくり静養する時間などを一定期間継続していく必要があります。
好ましくない様々な変化も全ては以前のように戻るための必要な経過として、どうか治療と向き合って頂ければと思います。
(なお、今回挙げた変化の他にも、うつ病になることで多くの身体症状・精神症状が現れる可能性があり、それらは人によって、また時期によっても出たり出なかったりするものです。これらが全て必ずうつ病になると起こるということではなく、また記載されていない状態が表れることご了承くださいませ。)

<執筆者プロフィール>
宮原直孝
一般社団法人いっぱんじん連合 代表理事
1984年 長野生まれ。
会社員時代の09年 7月頃〜11年1月頃までうつ病により休職、その後退職。
転職活動がうまくいかない現実逃避から何となく勢いで当法人を設立。
ストレス解消を目的の一環に、
・深夜帯に東京都内を集団でのんびりダラダラと歩く「深夜徘徊イベント」
・東京で深夜徘徊したい方同士を紹介、仲介する無料マッチングサービス「深夜徘徊.match」
などの運営を行う。
抱えている柴犬は、よく出来ていますが木彫りです。