オーナー企業の経営者がうつ病の心配がある時、会社はどうする?

2015年 7月 15日

まさかに備えた経営体制の構築を

オーナー企業などでは、経営者が病気で倒れて、仕事が出来なくなった場合、代わりにだれが事業を運営していくのかという問題に直面します。

このような場合、事業が停滞しないよう、すぐに代行者を立てられるように人材を育成しておく、若しくは、取締役会設置会社なら代表取締役に事故があった場合に、取締役会の議長を誰が務めるかあらかじめ順位とともに決めておきます。この場合、取締役会議長に事故があった場合の順位を決めておくことになりますので、復帰時には特別な手続は必要ありません。もちろんこういった形式は、事業運営を停滞することなく続けることが可能で、社長も治療に専念できる意味でも重要ですが、本質的には自分が抜けてもビジネスが成り立つような体制を構築することが何より重要です。

 

会社のための様々な選択肢を知っておく

そうはいっても中小企業において、社長抜きでビジネスを成立させることは現実的には難しく、社長に事故があった場合には経営を続けていくのが難しいと考えることもあると思います。このような場合でも、きちんと利益が出ていて、事業として魅力のある会社なら「売却」という手段をとることもできます。その時に備え、買い手が買収を検討できる材料である、財務状況、経営戦略、人材の準備が重要になってきます。万が一病気になった時の事も考えて、このような準備を視野に入れて事業をしていくことも経営者としては必要です。

 

しかし、中には経営自体が厳しく、経営者が病気で事業の継続が難しい場合、会社をたたむことを検討しなければいけない事も起こり得ます。

売却が難しいとなると、会社を清算(破産手続き等)することになります。これは、法的に会社の債務を整理することです。

 

会社の破産手続きと経営者個人の破産手続きは別のものです。破産手続きをして会社がなくなっても、経営者個人の破産後の生活を保護する法律があり、すべてがなくなってしまうわけではありません。たとえば、破産手続き開始後に取得した財産、99万円までの現金、家具などの生活必需品や年金受給権などは差し押さえが禁止されています。
これらは自由財産と呼ばれていますが、この自由財産を手元に残すためには財産の現金化などの事前措置を講じておかないと、破産手続きの際に破産管財人を通して経営者の個人財産を処分されてしまい、破産手続き後には手元にほとんど何も残らないという状況になってしまうこともあります。このようなことにならないよう、事前に専門家である弁護士に対処方法を考える必要があるのです。追い詰められた時には、できる対策は多くありません。日頃から万一の場合を想定し、ここは多少のコストを払ってでも万一会社が破産ということになれば、どうなるのかということを事前にシミュレーションしておくとよいでしょう。誰でも将来どうなるかはっきりしないとき不安になるものです。最悪の場合にどうなるのか、命までとられることはありませんし、再起のチャンスがあることを知っておけば、日頃の経営で感じている不安を少しでも払拭できるのではないでしょうか。
また、会社を清算となると、経営者個人の事だけでなく、従業員や取引先など、これまで会社を支えてきてくれた人たちに迷惑をかけるのではないかという不安もでてきます。
仮に破産をした場合、従業金の未払賃金立替制度や取引先など一部の取引先などだけに債権を弁済されてしまった場合に、裁判所が法的整理の手続の中でそれを取り消すことができる否認行為制度など従業員と取引先を守る制度があります。

 

すぐに相談できる専門家とのネットワークを

このように、きちんと事前準備をしておけば、社長が病気になって仕事ができなくなったとしても、会社を続けて行くことは可能ですし、たとえ、破産をしても、周りへの負担を最小限にし、自分たちの目先の生活を確保し、次につなげることができます。困った時には自分で抱え込まず、適した専門家に早めに相談することが大切です。今できることとしていえば、こういったことを電話一本で相談できる専門家を何名か目星をつけておくことです。コストはかかりますが、経営者の皆さんが抱えている不安を解消できるわけですから、コストパフォーマンスは悪くない投資ではないでしょうか。

 

【専門家プロフィール】

大原達朗
公認会計士、税理士、JMAA認定M&Aアドバイザー。
公認会計士2次試験合格後、青山監査法人プライスウォーターハウスを経て独立開業。
現在、アルテパートナーズ株式会社代表取締役、アルテ監査法人代表社員、財団法人日本M&Aアドバイザー協会理事、ビジネス・ブレークスルー大学院講師、法政大学大学院イノベーションマネジメント学科兼任講師。著書に「決算書のチェックポイント」、「決算を効率化する会計監査の実務」がある。
早稲田大学教育学部卒業、 ビジネス・ブレークスルー大学大学院経営管理専攻修了(MBA)。